私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

4回 死刑、執行

 二〇二〇年二月、私は、米テキサス州南東部ポーク郡にあるポランスキー刑務所で、ジョン・ウィリアム・ハメル死刑囚に面会した。彼は、二〇〇九年一二月一七日、就寝中だった妻と五歳の娘、そして妻の父である義父の三人をバットやナイフで惨殺し、家に放火した。

 死刑は、二〇二一年六月に確定し、テキサス州で唯一の死刑囚監房を持つポランスキー刑務所に収監された。ここでの独房生活は、八年八カ月が経過していた。私は、面会した翌月の一六日に予定されていたハメルの最期を見届けようと、再びスペインのバルセロナから渡米すると決めていた。

 しかしその頃、新型コロナウイルスが猛威を振るい、パンデミック宣言が出…

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