私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

司法精神鑑定の仕事

 慶應義塾大学医学部の精神・神経科医で、司法精神鑑定の第一人者でもあるむらまつろう准教授のもとを訪ねた。東京にあまり詳しくない私に対し、准教授は、信濃町駅からキャンパスまでの行き方や、彼の仕事場までの順路を、とても丁寧にメールで教えてくれた。

 多くの専門書と資料が本棚に並ぶ村松准教授の部屋に入り、挨拶を交わした。彼の仕事机の前にあるテーブル席に向かい合って腰掛け、私は、ここまでの取材の経緯を簡単に説明した。准教授は、「えぇえぇ、はいはい」と言って頷き、こちらの話を決して遮らず、じっくりと最後まで傾聴する人だった。

 この村松准教授は、重大事件の加害者の精神鑑定を年に数…

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