たった一人の弟を死刑という結末で失った五五歳の姉、ニータ・ハメル・ウディー(以下、ニータ)と、後日、電話で話すことができた。ハメル本人から、彼女の電話番号を預かっていたためだ。ハメルの処刑後、ニータは、どのような心境になっているのか。彼女は、弟の最期を見ていなかった。
彼女が住むサウスカロライナ州まで、足を運ぶことはできなかったが、彼女の思いを知っておきたかった。処刑から二週間が経過した七月一五日、私は、日本経由ですでにスペインに戻っていた。
スペイン時間の午後六時、サウスカロライナ州は正午だった。力が抜けたような声で、ニータが「ハロー」と電話に出た。
「あなたのことは、弟から聞いて…