私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

届いた遺灰

 たった一人の弟を死刑という結末で失った五五歳の姉、ニータ・ハメル・ウディー(以下、ニータ)と、後日、電話で話すことができた。ハメル本人から、彼女の電話番号を預かっていたためだ。ハメルの処刑後、ニータは、どのような心境になっているのか。彼女は、弟の最期を見ていなかった。

 彼女が住むサウスカロライナ州まで、足を運ぶことはできなかったが、彼女の思いを知っておきたかった。処刑から二週間が経過した七月一五日、私は、日本経由ですでにスペインに戻っていた。

 スペイン時間の午後六時、サウスカロライナ州は正午だった。力が抜けたような声で、ニータが「ハロー」と電話に出た。

「あなたのことは、弟から聞いて…

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