私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

 この旧刑務所には、新刑務所に引っ越した囚人や職員の痕跡が残っていた。囚人約二三〇〇人が生活してきたそれぞれの雑居房には、二段ベッドや簡易キッチンがあった。パスタや食べ残したビスケットなどが散らばっている。直火式エスプレッソメーカーや、鍋が添えられた電気コンロも放置されたままだ。つい最近までの暮らしぶりが伝わってきた。

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