私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

死刑場を訪問

 ハメルが処刑されるハンツビル刑務所の死刑場とは、どのような所なのか。ここで、私の目に収めた場景を描写してみたい。

 一般人の訪問は、基本的に許可されておらず、あまりメディア上でも目にすることがない。しかし、二〇二〇年二月、私は、死刑場を特別に案内された。ディーセル広報部長が刑務所の所長から、特別許可を得てくれたためだった。ただし、撮影は禁止だという。

 このハンツビル刑務所には、約一七〇〇人の受刑者がいる。ただ、現在では、有期刑や終身刑の囚人は暮らしていても、死刑囚は一人もいない。既述の通り、テキサス州の死刑囚はみな、ハメルのようにポランスキー刑務所に収監されている。彼ら死刑囚は、そ…

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