私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

 バーバラへの刺し傷の跡も、実に異様だった。検証では、右手によって刺された傷痕だったが、ジャラタノは左利きである。さらに、現場では運転免許証も見つかったが、所持者への容疑がかからないばかりか、指紋の鑑定すら行われなかった。

 これだけの疑惑が持たれる中で、新証拠の解明は進められず、彼の再審は成し遂げられなかった。ディーンズらの努力は、ジャラタノの無実の罪を晴らすまでには至らず、減刑措置を達成することが精一杯だった。彼女は、この結果に意気消沈した。

 私は、後日、ジャラタノと三〇年間の付き合いがあり、彼の仮釈放を実現したスティーブン・ノーサップ弁護士に連絡を取った。彼は、新証拠の解明が難航した理由を…

無料公開中のページへ
01