私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

 NHKが二〇二〇年一二月七日に放送した「聞けなかった言葉 死刑囚最後の肉声」の話になった。その死刑囚Aは、一九四六年に強盗目的で民家に押し入り、警察官一人を殺害していた。死刑執行は、三日前に告知された。NHKは、処刑を目前に控えたAが、大阪拘置所のたまさくろう元拘置所長らと交わした六五年前の音声記録を公開した。

 その当時、死刑囚は、死刑執行の事前告知を受けていた。法務省の資料によると、一九七六年一月二二日、東京拘置所において当日の朝に執行が言い渡され、この頃を境に、事前告知がなくなったようだ。

 番組の中で、四六人の死刑執行に携わったという玉井元所長が死刑囚Aに向かって、「何か言い残…

無料公開中のページへ
01