私と同じ44歳の彼は、もうすぐ帰らぬ人となる。処刑まで、あと1カ月を切っていた
〈犯した罪の償いとして、死刑が存在する。それは、人間社会が決める善と悪の基準に則って、できる限り悪を排除するための慣習なのだと思う。しかし、その基準は、全世界共通でないばかりか、国や地域や町によっても異なる。理想や希望こそあれ、死刑に絶対的な答えはない。〉生殖医療、安楽死と「生と死」をテーマにし続けてきたジャーナリストが、世界各国を取材し、死刑の「なぜ」に迫る。

あなたが会う人たちは死刑支持者

 マイアミの空港には、マスクを付けたアジア人の団体旅行客が集まっていた。中国・武漢で起きている「新型コロナウイルス」の感染を警戒していることは間違いない。だが、彼ら以外に感染予防策を講じている人は見当たらない。私も、マスクはまだ大袈裟だと思っていた。

 ヒューストンに到着し、日付は二月一五日に変わろうとしていた。この日は、空港近くのホテルに一泊することにした。入り口を抜けると、アメリカの懐かしい匂いが漂ってきた。ヨーロッパや日本のホテルにはない、バニラコーヒーなのかシナモンガムなのかよく分からない、この独特な甘い匂いがアメリカに来たことを実感させる。

 翌日、気温は摂氏一九度と二月にしては暖かかっ…

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