誰もが投票へ行く方法を、18歳選挙権から設計する
240万人の有権者の誕生!じつは、政治家たちは、その「1票」の怖さを知っている!国会議員の政策秘書が現場から語る、政治と選挙

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どう使う? 18歳選挙権

118歳選挙権は世界的な流れ

20166月、選挙権年齢がこれまでの「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられることになり、この年の夏の参議院選挙からいよいよ18歳選挙権が始まることになりました。

これはもともと、憲法改正のための「国民投票法」を国会でつくったさいに、投票権の年齢を18歳としたことに合わせて、国政などの選挙権の年齢も18歳に引き下げたものです。この18歳という年齢については、「世代間格差を埋めるので良いことだ」という意見や、反対に「高校3年生に選挙権を与えると学校の教師の影響が強く出すぎる」「受験の妨げになるのでは」という意見が聞かれました。たしかにどちらも一理あります。

選挙権のもつ意義

しかし、世界的に見れば、18歳以上に選挙権が与えられている国や地域が9割以上と、グローバルな流れにも合致しているのです。

18歳以上の日本国民(*)であれば、11票が与えられ、国政選挙や地方選挙で投票することができるようになります。


*選挙権がもらえるのは日本国民だけ? 18歳選挙権で1票がもらえるのは、いまのところ日本国民に限られています。

まず、国政選挙については、「その国の方向性を最終的に決めるのはその国の国民である」という憲法の国民主権の原則からして、日本国民に限定されることに争いはありません。

問題は地方選挙です。国政と違って地域の身近な問題をとりあつかうのだから、外国人、とくに定住外国人にも認めても良いのでは?という考え方と、いや地方政治であっても国政と密接に結びつく以上、日本国民に限定すべき、という考え方で分かれています。なお、最高裁判決では「憲法上外国人参政権は保障されていないが、法律でこれを付与することは憲法違反ではない」と判示しています。最終的には、国民的議論もふまえて国会で決めるべき問題だろうと思います。


ところで、「選挙」といえば、みなさんはどのようなイメージをもつでしょうか。

これまで身近なところでは、学級会とか生徒会で選挙をしたことがあったと思います。人によっては、アイドルの「AKB総選挙」を連想する人もいるかもしれません。

AKBは、CDなどを購入しなければ投票権はもらえませんが、18歳選挙権の場合は18歳以上であればそれだけで11票がもらえます。

では、これまでもなんにもしなくても自動的に11票が与えられてきたのでしょうか?

ちょっと歴史を知っている人なら、「それは違う」ということはご存知でしょう。日本で最初に選挙が行われたのは1890年(明治23年)、選挙権は国税を15円以上納税している25歳以上の男子に限られていました。これは当時の人口の1%程度にすぎませんでした。

1925年(大正14年)に25歳以上のすべての男子に選挙権が与えられるようになりましたが(大正デモクラシー華やかなりし加藤高明内閣のときで、治安維持法と同時に制定されました)、女子にはまだ選挙権がなく、結局、満20歳以上のすべての男女が選挙権をもつのは戦後の1945年(昭和20年)になってからのことでした。

この明治から戦後の間、誰もが選挙権をもつことができる「普通選挙制度」の実現を目指して、さまざまな運動が展開されました。その道は決して平坦なものではなく、政府の弾圧を受けた、険しい道のりだったことは歴史の教科書にも書いてあると思います。

18歳選挙権によってみなさんに与えられる1票は、決して当たり前のものではなくて、先人たちの苦闘によって勝ち取られた貴重なものであり、「この1票をぜひ投じたい」「1票を投じて日本を良くしたい」という気持ちが積み重なって得られたものなのです。

[コラム]
広がる有権者と候補者の年齢差


世界の被選挙権年齢を見てみましょう。

選挙権年齢では、18歳が世界の9割という圧倒的なシェアを占めていました。しかし、被選挙権年齢になると、18歳、21歳、25歳の三極になっていることがわかります。なかには17歳から被選挙権を与えている国もあります。北朝鮮と東ティモールです。北朝鮮は世襲による一党独裁政治、東ティモールは2002年にインドネシアから独立した新しい国であり、それぞれ特殊な事情がありそうです。

それでは、古くから人権意識の強かったヨーロッパはどうでしょうか。EU(欧州連合)では、加盟28カ国の半分以上の16カ国において、18歳で被選挙権が与えられています。イギリスの下院では、20155月の総選挙で、20歳という若さで全国民の代表となる女性議員が誕生しました。フランスの下院でも、2012年の総選挙で、22歳の議員が誕生しています。

一方、日本では、いまだ下院(衆議院)の被選挙権は25歳のままです。今回、18歳以上に選挙権年齢が引き下げられたことによって、かえって選挙権年齢と被選挙権年齢が離れてしまいました。さらに、上院(参議院)では被選挙権は30歳なので、18歳の有権者は、もっとも若くても干支でひとまわり違う人を選ぶことになります。これでは、自分たちの世代の代表を選べないのではないでしょうか?

諸外国では、選挙権年齢の引き下げにともない、被選挙権年齢の引き下げを行う例が多く見られます。日本においても、各政党は、被選挙権年齢の引き下げについても前向きな発言をしています。世界と同じように、若い人自らが政界に進出する、そういう時代が間もなく来るかもしれません。


218歳選挙権は、損か得か?

選挙権の意義、重要性をいくらいわれたところで、頭に浮かぶ疑問は、「18歳で選挙権をもらっても、何か得なことはあるんだろうか?」ではないでしょうか。

もらえるのは選挙1回につき、たった1票。AKB総選挙ならばCDを大量に買って投票権をゲットすれば、何百何千票と自分の推すメンバーに投票できるわけです。それが選挙権の場合、たった1票です。1票の行使で何か変わるんだろうか? 選挙に行っても何も変わらないんじゃないか? そういう無力感にとらわれる方が多いように思います。

しかし、本当にそうでしょうか?

かつて、野田佳彦前総理が1996年の衆議院議員選挙で落選したときの票差は105票でした(この敗北をバネにして努力を重ね、その後、野田さんは総理にまで上りつめました)。また、2014年の衆院選では、102票差という非常な僅差で勝敗が決まった選挙区が話題になりました。

市議会議員とか区議会議員といった地方選挙では、1票差で当落が決まるケースはザラにあります。もし、自分が投じた候補者が僅差で当選したら、自分の1票で決まったと強く実感できると思います。それこそ選挙の醍醐味が味わえるのではないでしょうか。

ちなみに、得票が同数になった場合は、「くじ引き」で当選者が決定されます。たまにニュースにもなるので、ご覧になった方もいるかもしれません。

もし、若者の代表に240万人が投票したら?

今回の選挙権年齢の引き下げで、新たに有権者になる18歳、19歳の若者は約240万人といわれています。

想像してみてください。たとえば、国政選挙で「若者の代表」といえる候補者たちを擁立して、240万人がこぞってこの候補者に投票したらどうなるでしょうか。

参議院選挙の場合、前回2013年の参院選の比例代表選挙で当選者を1人だけ出した社民党の得票総数は約1255千票でした。そうすると、計算上では、新たに有権者となった若者の2人に1人強が同じ候補に投票すれば、自分たちの代表を国会に送り込むことが可能ということになります。

もちろん、若者の代表を1人や2人、国会に送ったとしても、議員としてやれることには限界はあるかもしれません。法案は1人では提出さえできません。注目される本会議場で質問することもできません。しかし、評価は分かれるものの、1議員がパフォーマンスをすることで、世間の注目を集め問題提起することはできます。若者同士の横の連帯が、すぐにでも力を生み出せるということは、知っておいて損はないでしょう。

結論からいうと、選挙権は行使したほうが得です。いや、行使しないデメリットが大きいので、必ず行使すべきだといえます。

なぜかというと、年齢別の投票率を見ると、若者の投票率は低く、高齢者層のほうが圧倒的に高いからです。

2014年の衆議院選挙では、全体の投票率が5266%でした。そのうち、20代は3258%、30代は4209%と、いずれも平均を下まわっているのに対し、60代は6828%、70代以上は5946%と平均以上の投票率です。

低い! 若者の投票率

「シルバーデモクラシー」という言葉が、最近いわれるようになりました。高齢者の意見が反映されやすい政治、という意味ですが、投票率を見れば、これも致し方ありません。なぜなら、政治家は票をくれる人たちのいうことを聞くものだからです。

若者が政治に無関心で、選挙権を行使しないままだと、これからもどんどん高齢者に有利で、若年者に不利な政策が決まってしまう可能性があります。

例をあげれば、年金制度がそうです。現在の仕組みでは、私たちが納めた年金は自分たちのために積み立てられるわけではなく、そのままいまの高齢者の年金として使われることになっています(「賦課(ふ か)方式」といって、「世代間の仕送り」とも表現されます)。しっかりと政治に対して物申しておかないと、今後、少子高齢化がますます進行するなかで、若者は支払うだけ支払っても、もらえる金額が激減するのは間違いないでしょう。

若者同士が連帯して、若者自身の代表を送り込むという、新たな政治のビジョンを本気で構築し、声を上げていかなければなりません。

そのために、選挙権があるのです。そしてこれは、若者に有利な政治を実現しようという目的だけでなく、これからの日本全体の活力にもかかわる問題なのです。

第1章 どう使う? 18歳選挙権(2)

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