「出かける日、家を出る時間、乗る電車。すべて運の悪い方を選んでしまった」
遺族と加害企業トップの2人は、組織を変えるためにどう闘ったのか。あの事故から始まった13年間の「軌道」を描く。真山仁氏推薦!

8章 軌道

鉄道安全考動館

 入口に立つと、あの日の生々しい現場が目に飛び込んでくる。

 アルミ缶のように押し潰され、マンションの角に巻き付いた2両目の車両。台車が横転し、むき出しになった車輪と車軸。ひしゃげた3両目の屋根に上り、あるいは、折り重なる残骸のすき間から救助を試みるレスキュー隊員、救急隊員、警察の機動隊員。それに、近所の工場や事業所から駆けつけ、捜索や搬送を手伝う人びと。

 大きく引き伸ばした何枚かの報道写真が壁一面を埋める中で、最も目を引くのが上空からの俯瞰写真。懸命の救助が行われている現場から、マンションを挟んで死角となった線路上に、青い作業着姿に黄色いヘルメットの頭が数十人見える。JR西日本の社員たちだ。

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