衣笠、星野、江夏、村田兆治——珠玉の野球ノンフィクション9編
山際淳司が描いた衣笠祥雄、星野仙一らレジェンドの横顔。再編集版で復刻。

オールド・ボーイズ・オブ・サマー  

1994(平成6)年

 まだ人の気配のない外野スタンドの、そのさらに向こう側から突然、わっという喚声が聞こえてきた。

 打撃練習のためにマウンドに上がり黙々とボールを投げていたピッチャーはその喚声に思わずコントロールを乱し、ケージのなかのバッターに会釈すると外野スタンドを振り返った。

 開門を待ちかねていたファンが西武球場の、外野席の芝のうえを走っていくところだった。我先にとゲートを走りぬけ、自由席のいい場所を確保しようというのだ。

 410日の土曜日、プロ野球の開幕日。天気は下り坂に向かっているという予報だったが、ところざわの西武球場は晴天に恵まれていた。風が吹くとまだ肌寒さを感じる季節だが、スタンドは続々と観客で埋まって…

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