衣笠、星野、江夏、村田兆治——珠玉の野球ノンフィクション9編
山際淳司が描いた衣笠祥雄、星野仙一らレジェンドの横顔。再編集版で復刻。

田淵の夏の終わり  

1995(平成7)年

 ふじいさむは──最近では野球ファンの記憶によみがえることはなくなってしまったが──日本のプロ野球の公式戦で初めてホームランを打ったバッターである。

 甲子園球場は大正131924)年に造られたもので、外野を使ってラグビーの試合もできるように設計されたから、サイズは今では考えられないほど大きかった。

 両翼の110m、センターの119mはいいとしても、左中間、右中間が128mと異様に深く、ホームランが出るような球場ではなかった。

 その甲子園では主に学生野球が行われ、来日したアメリカチームも試合をしているが、最もサイズの大きかった甲子園球場ではスタンド入りのホームランは一本も記録されていない。

 昭和11年に…

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