風評被害のページ一覧

周りの多く人が、自分を嘲笑っているような気がする。事件、事故、不祥事がマスメディアで報道され続ける。それに巻き込まれ、自分が手塩にかけて育ててきた農作物、自分が苦労して獲ってきた魚、開発に何年もかけてようやく完成した自分の会社の商品までが、な…
「風評被害」とは何か。この言葉が、どのような事例を指して、いつ頃から一般的に使われるようになったのか。これを明らかにすることからはじめよう。本章では、風評被害という言葉がよく使われるようになった事例とその背景を述べた後、これらの事例の共通点に…
風評被害という言葉を一気に定着させるきっかけになったのが、99年9月30日に起きた、茨城県東海村の核燃料加工施設JCOで発生した臨界事故である。これは、ウラン溶液を均質化する作業の最中に、適切でない沈殿槽を用いたために、原子核分裂の連鎖反応が…
風評被害は、もともとは原子力が関係する事故で問題になりはじめたということは第1章で述べた。そうなったのは、風評被害という概念、およびその事象が、歴史的に原子力ときわめて深い関係にあったからである。本章では、日本ではじめて風評被害が問題となった…
風評被害という現象は、前章で挙げた「放射能パニック」をその嚆矢とすることができる。その後「風評被害」という言葉は、原子力に関するいくつかの事故を経て、原子力関係者の中で次第に定着していく。そして、その過程で、国民の間に原子力に対する不信感が本…
「むつ」の放射線漏れ事故の次に大きな問題になったのが、81年4月に起きた日本原子力発電の敦賀発電所(以下、敦賀原発)の放射性物質漏洩事故である。その2年前の79年3月28日に、米ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所で放射性物質が漏洩す…
原子力船「むつ」の事故や敦賀原発の事故などを契機として、放射性物質による汚染がないにもかかわらず食品・商品が忌避されるという経済的被害が、原子力関係者や、漁業関係者を中心とした原子力施設の周辺住民に認識されはじめた。地元生産者にとっては、その…
第1章で、風評被害とは何かを考え、そこには「安全」という概念が強く関わっていることを確認してきた。第2章、第3章では、日本において「風評被害」という言葉が使われるようになった過程に、原子力が密接に関係していることを確認してきた。では、なぜ風評…
このように、報道の送り手側によってタイプキャスティングという手法が採られることで、報道の受け手である視聴者は、事件や事故、災害に対してステレオタイプの認識を行うようになる。このことを災害に絞って論じてみよう。災害報道は、往々にして被災地の中で…
風評被害を発生させる社会的背景について、第4章で「メディア報道」について考えたが、本章では、「安全」という概念に着目する。「情報過多社会」とともに「安全社会」も風評被害が成立する前提となる。この「安全」と風評被害との関係において着目すべきこと…
風評被害を発生させる社会的背景について、第4章では、「メディア報道」について、第5章では「安全」について論じてきた。本章では、いま一つの社会的背景「流通」について考える。日本は諸外国と比べて、流通網が極めて発達している。配達の遅延や誤配の少な…
第1章で風評被害の定義を述べ、第2章、第3章で原子力と風評被害との歴史的関わりについて考えてきた。第4章から第6章で、風評被害を発生させる社会的背景について「メディア報道」「安全社会」「流通」を軸に考えてきた。第1章でも紹介したように、90年…
感染症が問題になった際、観光産業が経済的被害を受けることも、風評被害と呼ばれることがある。2003年のSARS騒動や2009年の新型インフルエンザ騒動の時である。2003年5月、台湾人の医師が、関西を中心に観光旅行をした。帰台後、医師がSAR…
「風評被害」という言葉が2000年前後に一般に使われるようになってきてから、企業や金融機関がこうむる経済被害においても、「風評被害」という言葉が使われるようになった。それまでは「風説の流布」、特に銀行の場合は「取り付け騒ぎ」と呼ばれていた。本…
時期は前後するが、最初に金融関係者に「風評被害」という言葉を認識させた事件は、生命保険業界で起きた。日本生命保険(以下、ニッセイ)の営業活動が「風評営業」にあたるとして、2001年11月1日、金融庁がニッセイに対して業務改善命令の行政処分を行…
2011年3月11日14時46分、宮城県沖でマグニチュード9・0の地震が発生した。それによって引き起こされた津波も含め、先進国が受けた世界最大級の自然災害となった。本書を執筆している4月25日の時点でもまだ余震が続き、被害が甚大なあまり、その…
では、東日本大震災直後のうわさの温床となった「不安」の原因について考えてみたい。まず、第一に、大地震、巨大津波、続く余震に対する「不安」である。3月11日、首都圏では、まずコスモ石油千葉製油所のタンク火災、その後、津波そのものの映像や津波で壊…
ここまで、日本で起きた風評被害について、「第五福龍丸事件」から「東日本大震災」までの事例をもとに説明してきた。最後に、今後、日本が直面するであろう風評被害について述べてみたい。そして最後に、東日本大震災後の日本に突きつけられた「最大の難問」に…
海外の人にとって恐怖の対象となるのは、日本に林立する原発のリスクだけではない。そもそも日本は自然災害のリスクが高い。それこそが恐怖なのである。政府に地震調査研究推進本部という組織がある。阪神・淡路大震災の後、設置された機関で、地震の「長期評価…
本書では紙幅の都合で、風評被害の対策についてはあまり触れてこなかった。風評被害とは、本論で論じたように、情報過多社会、安全社会、高度流通社会における災害や原子力事故などがもたらす経済被害の一形態である。よって、これを避けることは根本的に困難で…
本書は、私が12年間「風評被害」について調べてきたことをまとめたものである。私は東京大学社会情報研究所というところに設置されていたマスメディアや情報について研究する大学院に入り、数少ない、社会科学的な災害研究をされていた、今は亡き廣井脩先生に…
【引用・参考文献】IOPC(国際油濁補償基金)ホームページ http://www.iopcfund.org(参照年月日:2003.9.1)アジャイルメディア・ネットワーク株式会社2011「東日本大震災で考えるソーシャルメディアの役割(暫定版)…
関谷直也(せきやなおや)1975年新潟生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。東京大学大学院人文社会系研究科社会情報専門分野修士課程修了。東洋大学社会学部准教授。2007年日本災害情報学会学術貢献分野・廣井賞受賞。2009年日本広報学会賞優秀研究…
風評被害 そのメカニズムを考える2011年5月20日初版1刷発行2011年6月24日電子書籍版発行著 者―関谷直也発行者―古谷俊勝装 幀―アラン・チャン発行所―株式会社光文社東京都文京区音羽1-16-6(〒112-8011)http://ww…

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