生きるか死ぬか。それが、村山にとっての将棋の正体であり意味であった。
名人を目指し、将棋界に入った村山聖は、重い腎臓病を抱えていた。彼の一手、一局はまさに命懸けだった。

第五章 魂の棋譜

帰郷

 しようかいは再度大ブームのちゆうにあった。6かんを保持したが再び、王将戦ちようせんけんにぎり、7りにいどんだのである。保持している6冠のタイトルをすべて防衛して、挑戦権をもつかむという神がかり的な勝ちっぷりであった。

 スポーツ新聞は1面ででかでかとその経過を伝えた。「おっかけ」と言われる女性将棋ファンの出現に関係者は目を白黒させた。将棋に対する社会の注目度が明らかに以前とは変わっていた。将棋会館はいつでもざわざわとさわがしく、活気づいていた。平成82月のことである。

 社会現象ともいえる熱い注目を浴びながら、羽生は自分自身も

この作品では本文テキストのコピー機能を制限しています

01