第四章 夢の隣に
自立のとき
平成5年、B級1組昇級を果たした村山は、王将戦挑戦の実績を高く評価されて第20回将棋大賞敢闘賞受賞の栄誉に浴した。名実ともに一流棋士の仲間入りである。
しかし、村山の生活の基本スタイルには何の変化もなかった。増える収入、高まる名声、そんなことはどこ吹く風で淡々といつも通りの生活を繰りかえしていた。一歩一歩、上りつめてきたものの谷川と羽生、この二人にはまだ埋めなければならない差があることを村山は熟知していた。
名声や収入は村山にとってはどうでもいいことであり、何の関心もなかった。
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