生きるか死ぬか。それが、村山にとっての将棋の正体であり意味であった。
名人を目指し、将棋界に入った村山聖は、重い腎臓病を抱えていた。彼の一手、一局はまさに命懸けだった。

第二章 心の風景

師匠

 むらやまさとしが広島の病院のベッドの上で傷心の日々を送っているころ、もりのぶも大阪のアパートでねむれない夜をすごしていた。昭和57年の冬のことである。

 村山聖、13さい。森信雄、30歳。二人は師弟であり、そして師弟関係を結んだために、結果的に村山のしようれいかい入会は先送りされることになってしまった。

 森にはわからなかった。自分が意地を張ったのがいけなかったのだろうか。あのとき、自分があっさりと折れていれば、いまごろ村山は奨励会1年生としてかどかざれていたのかもしれない。

 しかし、村山をはじめて見たときの胸のときめきが森には忘れることがで…

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