戦時下と変わらない「空気を読め」のシステム
エロ・グロ・ナンセンス〜日中戦争・太平洋戦争期までの資料を丹念に追い、一言では言い尽くせない検閲の世界に迫る。
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「筆端露骨淫卑に渉るもの尠からず」

 ふたたび検閲の実例をみてみよう。

 昭和初期は、エロ・グロ・ナンセンスと呼ばれる享楽的な都市文化が花盛りで、淫本のたぐいは枚挙にいとまがなかった。その資料としては、さきにあげた「出版警察報」がやはり役に立つ。これもまた、一九二八年の予算倍増によって創刊された。近年、検閲官が審査に使った書き込み本の調査研究も進んでいるが、全体を見渡すにはこれに勝るものはない。

 まず、性器、性慾、性行為などを露骨に描写したわかりやすい淫本から。

 花房四郎の『男色考』(文芸資料研究会編輯部)は、その名のとおり、男色の起源、歴史、方法、所感を記述した単行本である。検閲官はタイトルなどで目星をつけ、問題がありそうな出版…

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