戦時下と変わらない「空気を読め」のシステム
エロ・グロ・ナンセンス〜日中戦争・太平洋戦争期までの資料を丹念に追い、一言では言い尽くせない検閲の世界に迫る。
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第一部  検閲の動揺

第一章 エロ・グロ・ナンセンス対検閲官(一九二八~一九三一年)

検閲官は淫本の評論家?

 検閲とはなにか。それを知るには、実例をみるにしくはない。

 つぎは、一九二八年九月三日付で発禁処分されたアンリ・ソルディーユの『オデイツトとマルテイーヌ』(青山倭文二訳、文芸資料研究会)の一節である。女学校の寄宿舎内における同性愛を記述した点などが、風俗壊乱にあたるとされた。

 わたしはあの子のつぼみをいぢり始めたの。妾がそれをしてゐる間、マルテイーヌは顔を両手で隠して一言も言はないの。あの子はもうすつかり任せきつてゐたわ。妾の愛撫があの子に至妙の感覚を与へたのよ。間もなく痙攣が起つたわ。だつて妾達が愛撫を始めてから妾達は享楽に適した状態にあつたんですもの。

 悦楽に堪へきれなくなつたマルテイーヌは低い低…

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