韓流スターとファンが恐れる「空白の2年間」
続々と入隊する20代の韓流スターたち。兵役で2年もの間ファンの前から姿を消さざるをえない彼らの苦悩、兵役の実態!
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序章 入隊していく韓流スターたち──ファンに見守られ……

1 軍楽隊に選ばれた東方神起のユンホ

 兵役に就く韓流スターにとって、絶対に避けて通れない儀式となっているのが、新兵訓練所に入隊するときの決意表明です。

 これまでに多くのスターたちが、国内外から見送りに来たファンに向かって、「これから行ってまいります。2年後には立派な人間になって戻ってきます」と決意を述べて、訓練所に入隊していきました。頭髪を短く切り、顔つきもせいかんです。いかにも「これから軍務に励みます」という意思表示が明確なのです。

 かたぐさになっているのが、人気俳優のヒョンビンが、韓国南東部の浦項(ポハン)にあった海兵隊の教育訓練団に入ったときのことです。

 それは、201137日のことでした。髪を短く切ったヒョンビンは、集まったファンの前で「元気な姿で2年後に再びお目にかかります」と決意表明をして、教育訓練団に入隊していきました。

 そうした姿を見て、ファンは、まるで最愛の恋人を軍隊に送り出すかのように、あこがれのスターに励ましの声をかけるのです。

 それは、長く続く別離の始まりでもあります。しかし、この「儀式」があるからこそ、ファンとスターの双方が、はっきりと気持ちを踏ん切ることができるのかもしれません。

 しかし、最近はちょっと事情が変わってきています。

 入隊する様子を公開しないで、ひっそりと入隊することを望むスターが多くなっているのです。

 たとえば、とうほうしんのユンホがそうでした。彼の一連の言動を通して、韓流スターたちの最近の兵役入りについて考えてみましょう。

 2015年初頭から、「ユンホが年内に入隊する」ということが確実視されており、その動向は、多くのファンとメディアの注目のまとになっていました。

 先走った韓国のあるメディアは、公式発表よりも前に、「ユンホが201576日に入隊する」と報道してしまいました。

 この情報が一人歩きして、ファンの間でも騒然とした雰囲気になりました。これをゆうりよした所属事務所のSMエンタテインメントは、69日になって、「入隊は76日ではありません。正確に確認したうえで発表します」と明らかにしたうえで、ユンホの入隊は721日と正式発表しました。それをふまえて、613日と14日の2日間にわたって、ソウルで東方神起のイベントが開催されました。

 このイベントは、ユンホのみならず、チャンミンにとっても、東方神起として行なう入隊前のラストステージとなりました。2人はそれぞれ、かならず成長して戻ってくることを、ファンの前で誓ったのです。

 ユンホの入隊日となった2015721日。

 小雨がぱらつく中、ソウル市郊外の楊州(ヤンジュ)にある第26師団の新兵教育隊の施設前には、多くのファンが集まっていました。

 ユンホは、入隊する様子を非公開にすると表明していました。

 ファンはユンホとの交流を持てないと知っていましたが、それでもやはり多くのファンはじっとしていることができず、現地にやってきました。しかも、国内だけでなく日本、中国、タイなどからも大勢の人が集結したのです。

 ユンホが入隊する時間が近づくと、新兵教育隊の施設前は緊張感に包まれました。すでにファンは、携帯やデジカメを手に持ち、ユンホの登場に備え始めていました。

 午後145分頃、ユンホを乗せた車がファンの前を横切りました。残念ながら、ユンホが車窓から姿を見せることはなく、ファンの中には、刻一刻と迫る別れに、大粒の涙を流す人もいました。

 施設の入口で車を降りたユンホは、関係者たちに囲まれながら、新兵教育隊に向かいました。

 彼の隣りには、芸能界での親友といわれる俳優ソン・ホジュンがいました。別れをしむかのように目元をぬぐうソン・ホジュンの姿が、特に印象的でした。

 結局、この日のユンホは、ファンに向けて入隊の決意表明をすることはありませんでした。

 しかし、彼は入隊と同時に、SMエンタテインメントのホームページ上に、ファンに向けた2枚の直筆の手紙を公開しました。

 手紙の内容は次のとおりです。

「みなさま、こんにちは、ユンホです。

 ついに私も軍隊に行くことになりました。

 この手紙を見る頃には、私は入隊して訓練を受けていることでしょう。

 今は、知人や友達と最後の送別会を終えて、家でこうして1文字1文字書いています。

 本当に、つらいときから、楽しかった日、幸福な日にずっと一緒にいたのに、今度はこういう日が来てしまいました。

 学生だった私が軍隊に行くとは……(30歳ですからね)。

 振り返れば、申し訳ないことが多かったかな。

 じつは……今回、軍隊に行くときも、みなさまにあいさつしたかったのですが、もうユノ・ユンホではなく、人間チョン・ユンホとして、アーティストの夢を見ていた最初の気持ちのように、再び始めて成長してみたくなり……非公開でこうして行くことにしました。

 また、いろいろな顔を見たら弱くなってしまいそうで……。

 いつも私だけのスタイルで頑張ってきましたが、除隊するときは、より強くて、いっそう素敵な怪物になって帰ってきます!

 今までいつも応援してくださり、とても感謝しています。

 これからも応援してください。

 また、舞台の上で会えることを約束して……。

 私たち、また会いましょう。

 愛しています」

 直筆で書かれたユンホの手紙には、ファンへのあふれるばかりの愛情と、さらなる成長への約束が込められていました。

 こうした決意を裏づけるように、ユンホは827日に5週間の新兵訓練を終えると、その修了式で、新兵教育隊長から直々に、もっとも優秀だった訓練兵に授与される「最優秀訓練兵賞」を贈られました。ユンホは、新兵訓練の期間、ファンにちかった決意をつらぬいたことを証明したのです。

 新兵訓練を終えたユンホは、わずかな休息をしたあと、陸軍の第26師団の軍楽隊に配属されました。

 軍楽隊は、音楽を通して軍の活動を広報する部隊で、同じ陸軍でも、通常の歩兵とは軍務がまるで違います。志願者も多いのですが、これまでの音楽活動が高く評価されたからこそ、ユンホは難関の軍楽隊に選抜されたのです。

2 義務警察で兵役を代替させたチャンミン

 2015年の春、俳優のイ・ジュンギと東方神起のチャンミンが、ファンタジー時代劇『夜を歩く士(ソンビ)』で共演するという情報が日本にも伝わりました。

 もちろん、多くの韓流ファンが大喜びしましたが、同時に、東方神起のファンの間では、「チャンミンにとって、入隊前の最後の作品になるのでは」という憶測が流れました。

 この時点ですでに、東方神起の2人のうち、ユンホの入隊が確実視されていました。チャンミンが1人になってしまうわけですが、そうであるならば、チャンミンも同じく入隊したほうが得策なのは間違いありません。

 そのほうが、同時期に除隊できて、一緒に活動を再開できます。兵役による活動停止期間を最小限にできる方法であることは確かです。

 案の定、『夜を歩く士(ソンビ)』の初放送にあたる78日の前日に、チャンミンが11月に入隊して義務警察に入ることが発表されたのです(義務警察に関しては、1章「7 軍務の代わりに役所勤務や義務警察がある」以降で詳しく説明いたします)。

 この義務警察で、規定の期間を勤めあげると、兵役終了と認められます。つまり、韓国の兵役には、軍隊の代わりに警察に行く方法もあるのです。

 ユンホが20157月に入隊したあと、チャンミンは『夜を歩く士(ソンビ)』の撮影と、プロモーションを中心に活動しました。115日には、横浜アリーナで開かれたファンミーティングにも出演し、日本のファンの前で、入隊前の最後の挨拶をしました。

 彼が、自分の断髪の様子を撮影した動画をネット上に公開したのは、1118日のことでした。バリカンを使ってにこやかに髪を短くするチャンミン。

 BGMは「カジマー~、カジマー~」と歌っています。「カジマ」とは「行かないで」という意味の韓国語です。

 思わず、クスッと笑えるような映像でした。チャンミンなりに、明るく入隊していこうとしたのでしょう。その思いは、ファンに十分に伝わったはずです。

 映像が公開された翌日の1119日、チャンミンは韓国中部の論山(ノンサン)にある陸軍訓練所に非公開で入隊しました(義務警察に行く人も、最初に4週間の新兵訓練を受ける必要があります)。ユンホの入隊も非公開でしたから、チャンミンもそれに合わせたのでしょう。

 彼は、「SUPER JUNIOR」のチェ・シウォンと一緒に入隊しました。現在ではこのように、友人同士が同時に入隊することが認められています。これを「同伴入隊」と言いますが、この制度をチャンミンとチェ・シウォンが有効に使ったのです。

 励まし合える友人と一緒に入隊する……チャンミンとチェ・シウォンは、さぞかし心強かったことでしょう。

 2015123日、東方神起が所属するSMエンタテインメントの公式ホームページに、新兵訓練中のチャンミンがファンに向けて書いた自筆の手紙が公開されました。

 主な内容は以下の通りです。

「みなさん、お元気ですか。私はとてもよく過ごしています。ここ(陸軍訓練所)では、分隊員や小隊員たちと親しくしています。ご飯も本来の食欲のままに狂ったように食べています」

「私の言葉が堅苦しくても理解してください。もともと軍人の方々はいかにも軍人らしく格好カツコ良く話すのです。私も格好良く話したくて努力中です」

「入隊の日、私の19カ月を応援してくださったファンの方々に感謝いたします」

「ファンの方々の応援メッセージを読むと力が出ます」

 手紙が公開されたのは、入隊(1119日)から2週間が過ぎたタイミングでした。

 新しい環境に慣れるのが大変で、本人には相当な戸惑いがあったはずです。それでもチャンミンは、「食欲が旺盛で、すこぶる元気であること」を強調していました。ファンに心配をかけまいと、彼なりに精一杯に気をつかっていたわけです。ファンもその心情をすぐに察したことでしょう。

 新兵訓練を終えたチャンミンは、自ら手紙に書いているように、ファンの応援メッセージに力を得ながら、義務警察の任務に励んでいました。

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序章 入隊していく韓流スターたち――ファンに見守られ……(2)

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