医療現場で「非合理な意思決定」が行われるメカニズムとは
医療現場での「決められない」「先延ばし」はなぜ起こってしまうのか? 行動経済学を用いて理論的背景とその解決策を示す。

2 がん治療の現場における事例

 では、実際のがん治療の現場で起こる様々な「予想外の選択」は、行動経済学の考え方を用いることでどのように理解することができるのだろうか? この節では、実際の臨床例を取り上げ、そこでどのようなことが起こっていたのか、行動経済学の考え方を用いて考えていきたい。

事例A:家族の反対により患者への病状説明が遅れたケース

 52歳の女性患者が、直腸がん再発(肝転移、がん性胸腹水)と診断され、全身化学療法を3サイクルし、部分寛解(partial response; PR)であった。

 しかし、4サイクル目以降、病勢が増悪し、がん性腹膜炎による腸閉塞を発症し、入院となった。腹水貯留が明らかであったため、腹水穿刺を行い、淡血性の腹水3000mlが排出された。疼痛コント…

この作品では本文テキストのコピー機能を制限しています

01