医療現場で「非合理な意思決定」が行われるメカニズムとは
医療現場での「決められない」「先延ばし」はなぜ起こってしまうのか? 行動経済学を用いて理論的背景とその解決策を示す。

1 行動経済学的特性と健康行動の関係

リスクを嫌う人ほど健康的な行動を取らない

 医療健康行動に関する行動経済学の研究は、近年、急速に進んでいる。医療現場の問題意識に直結した研究が多く、その成果がそのまま診療に使えるものや、ナッジを設計するときのヒントになるものまである。

 医療行動経済学の研究には大きく2つのタイプがある。一つは、意思決定上の行動経済学的なクセが積極的な医療健康行動を取りやすくしたり、逆に、阻んだりしていることを明らかにする研究である。もう一つは、人の行動経済学的なクセを逆に利用して、積極的な医療健康行動を促進しようとする、ナッジの研究である。

 前者のタイプの、行動経済学的な特性と医療健康行動の関係を明らかにした研究を紹介しよう。医療健康行動は、基本的に不…

この作品では本文テキストのコピー機能を制限しています

01