医療現場で「非合理な意思決定」が行われるメカニズムとは
医療現場での「決められない」「先延ばし」はなぜ起こってしまうのか? 行動経済学を用いて理論的背景とその解決策を示す。

4 がん患者の意思決定支援に行動経済学的アプローチを用いることの有用性

 例えば、がん患者の終末期において、臨死期に心肺蘇生などの医療行為を差し控える選択をする場合において、「する」と「しない」を同列に並べて患者や家族に選択を迫る方法、いわゆるインフォームド・チョイスを用いることは極めて残酷であると言える。

 わが国でも一時、有名となったアメリカの哲学者のマイケル・サンデルは、人間の責務は3つに大別できるとしている21

 1つ目は自然的責務であり、普遍的で、合意を必要としないものである。例えば、敬意をもって人と接し、正義を行い、残虐な行為をしない、などである。

 2つ目は自発的責務で、個別的であり、合意から生じるものである。私たちが、他者の善(言い換えれば利益)を気…

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