医療現場で「非合理な意思決定」が行われるメカニズムとは
医療現場での「決められない」「先延ばし」はなぜ起こってしまうのか? 行動経済学を用いて理論的背景とその解決策を示す。

事例B:ベスト・サポーティブ・ケアへの移行が推奨される場面で免疫療法を希望したケース

 看護師をしている46歳の女性患者が、乳がんを再発し骨転移した。A市内の小規模な病院の病棟勤務で夜勤がある。3年前に手術、術後放射線療法、化学療法を行い、術後にタモキシフェン(ホルモン療法の薬)内服を継続中であった。1か月前から腰痛と左下肢に軽いしびれが出現していたが、仕事で忙しく、以前から腰椎ヘルニアも指摘されており、同じような症状を経験していたため、気にしていなかった。しかし、このところ、左下肢に力が入らなくなって、転びそうになった。

 定期受診の際に、担当医に症状を伝えたところ、骨転移が疑われ、画像診断の結果、腰椎転移の確定診断に至った。この時点で左下肢はすでに軽い運動麻痺が生じており、緊…

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