医療現場で「非合理な意思決定」が行われるメカニズムとは
医療現場での「決められない」「先延ばし」はなぜ起こってしまうのか? 行動経済学を用いて理論的背景とその解決策を示す。

2 ナッジの研究

 ここからは、人の行動経済学的な特性を利用して、積極的な医療健康行動を促進しようとする、ナッジの研究を紹介していこう。本節で取り上げるナッジの研究の多くは、せっかちであったり、先延ばし傾向が強かったりするために、タバコをやめられなかったり、ダイエットを継続できなかったり、健康診断を受診できなかったりする人を主な対象にしている。彼らに積極的な医療健康行動を選択してもらうには、どのような工夫が有効なのかを紹介する。

 その前に、患者の行動を変えることを目的とした医療者や政府の作為的な介入に否定的な考え方について議論しておこう。伝統的な経済学では、せっかちなために結果として不健康になったとしても、本人…

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