医療現場で「非合理な意思決定」が行われるメカニズムとは
医療現場での「決められない」「先延ばし」はなぜ起こってしまうのか? 行動経済学を用いて理論的背景とその解決策を示す。

はじめに

 「残念ですが、もうこれ以上、治療の余地はありません」。久坂部羊著『悪医』の冒頭の文章である。あなたががん患者だったとして、医者からこのように言われたら、大きなショックを受けるだろう。当然、治療の可能性について、何度も問いただすに違いない。

 『悪医』の主人公の一人で、外科医の森川良生は、「もうつらい治療を受けなくてもいいということです。残念ですが、余命はおそらく三カ月くらいでしょう。あとは好きなことをして、時間を有意義に使ってください」と説明する。副作用で命を縮めるより、残された時間を悔いのないように使ったほうがいいから、患者のためを思って告げるのだという。

 確かに、がんという病気と治療法を熟…

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