政治は大衆の欲望に基づくべきではない
民主主義のアップデートは可能か。「空気」を可視化し、合意形成の基礎に据えられないか――刊行時、活発な議論を招いた重要書。

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第四章

 一般意志は数学的な存在である。それは人間の秩序にではなくモノの秩序に属する。コミュニケーションの秩序にではなく数学の秩序に属する。

 したがって、一般意志の生成には、共同体の成員の合意は必ずしも必要がない。一般意志は、成員がたがいになにも話しあわず、たとえひとことも口を利かず、目すら合わさなかったとしても、そこに共同体があるかぎり、端的に事物のように「存在」する。統治はその存在に従わねばならない。

 前章までの議論で示したように、ルソーはどうやら『社会契約論』でそのような政治のありかたを模索していたようである。だとすれば、それは直接民主主義とも間接民主主義とも異なる。また個人主義とも全体主義とも…

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