政治は大衆の欲望に基づくべきではない
民主主義のアップデートは可能か。「空気」を可視化し、合意形成の基礎に据えられないか――刊行時、活発な議論を招いた重要書。

第一〇章

 本書の中核的な主張はほぼ語り終えた。

 いかがだろうか。筆者はここまで、ルソーの『社会契約論』に始まり、アーレントとハーバーマス、フロイト、グーグル、さらにはクリストファー・アレグザンダーと、じつに多様な固有名を渡り歩きながら、ジグザグした議論を展開してきた。もしかしたらその歩みに戸惑っている読者も多いかもしれない。

 ここまでの議論をあらためて確認し整理してみることにしよう。

 まずは本書は、ルソーについて新しい解釈を提出した。近代民主主義の基礎概念、ルソーの「一般意志」は、一般に考えられているのとは異なり、討議を介した意識的な合意ではなく、むしろ情念溢れる集合的な無意識を意味している。これが本…

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