東宝・小林一三の「理想」vs.松竹兄弟の「現実」
演劇を近代化した稀代の興行師、大谷竹次郎・白井松次郎兄弟と小林一三の活躍を中心に描いた、新たな演劇史。

大詰 それぞれの戦後

 昭和二十年八月の敗戦時、残っていた劇場は、東京では東京宝塚劇場、日本劇場、有楽座、帝国劇場、東劇で、松竹は東劇以外全滅だった。

 戦後の占領を考え、アメリカ軍は国家の中枢である丸の内地区には空襲しなかったと思われ、東宝と松竹の明暗は分かれたのだ。

 東劇では九月一日に猿之助一座の公演が始まった。戦後最初の歌舞伎である。続いて十月三日から帝劇で尾上菊五郎一座が公演した。長谷川一夫も九月十八日から東京宝塚劇場で公演を始めた。

 しかし東京宝塚劇場はこの後、占領軍に接収され、アメリカ兵の慰安のための劇場、アーニー・パイル劇場となり、東京のど真ん中にありながら日本人は入れない劇場となってしまった。東宝へ返…

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