東宝・小林一三の「理想」vs.松竹兄弟の「現実」
演劇を近代化した稀代の興行師、大谷竹次郎・白井松次郎兄弟と小林一三の活躍を中心に描いた、新たな演劇史。

あとがき

 いつのことなのかは分からないが、小林一三と大谷竹次郎とが会い、こんな会話を交わしたらしい(『百人が語る巨人像 大谷竹次郎』)。

 大谷が小林に「相変わらず、事業の発展で忙しいですね」と社交辞令を言うと、小林は「因果なことですよ。大谷さんは、文楽や歌舞伎という愛人がいて、幸せですね」と応じた。

 すると大谷が「あなたにも、歌劇という可愛い娘がいるじゃないですか」と返し、小林が「お互い、すべての仕事をやめても、愛人と娘だけには情熱をかけましょう」とまとめた。

 いまの「愛人」は「妻以外の女性」という意味だが、昔は字の通り「愛する人」という意味で使われていたので、二人もそういう意味で語ったと思う。

 大谷…

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