東宝・小林一三の「理想」vs.松竹兄弟の「現実」
演劇を近代化した稀代の興行師、大谷竹次郎・白井松次郎兄弟と小林一三の活躍を中心に描いた、新たな演劇史。

発端 歌舞伎座開場

 明治二十二年(一八八九年)十一月二十一日、東京・びき町(現・中央区銀座四丁目)で、新しい大劇場「歌舞伎座」の開場式が挙行された。

 明治は四十五年まで続くので、明治二十二年は、ちょうどその半分が過ぎた頃にあたり、この年の紀元節(二月十一日)に大日本帝国憲法が発布された。憲法が制定されるまで、維新から二十年の歳月が必要だったのだ。しかも、まだ国会は開設されていない。

 明治維新は演劇の世界にも大改革をもたらした。徳川政権は武家の娯楽として能を手厚く保護していたが、歌舞伎は規制、弾圧する対象としていた。それが明治になると逆転し、能は壊滅寸前となり、歌舞伎は新政府の庇護を受けたわけではないが、規制が大…

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