マウンドは江夏のためにあった——野球短編の傑作12選
名作再び。早世した作家による野球短編だけを集めた、新しい傑作選。

落球伝説 

1981(昭和56)年

 彼は、あの落球の男、といわれている。そんな言われ方をしてしまう選手は極めて少ない。彼は阪神タイガースの選手だったのだが、タイガース・ファンはもとより、プロ野球シーンをたんねんに追っているファンも彼の名前を聞くと、ああ、あの時の選手か、と、一つのシーンを思い出すことになっている。

 名前は池田純一。1965年にタイガースに入団し、78年のシーズンが終わったところで球団から自由契約をいい渡され球界を去っていった。通算打率は241厘、80本のホームラン、295打点──という成績を残している。

「あの落球がなければね……」と、タイガース・ファンは語ることになっている。「あいつの野球人生は変わっていた…

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