マウンドは江夏のためにあった——野球短編の傑作12選
名作再び。早世した作家による野球短編だけを集めた、新しい傑作選。

幻の甲子園と冨樫淳

1984(昭和59)年

 甲子園球場に、これまで何度足を運んだことになるのだろうか。

 ぼくは東京に住んでいるから、そうしばしば甲子園に行くことはできない。それでも関西に行ったときはたいてい甲子園のスタンドのどこかにすわることになる。タイガース戦のスケジュールをあらかじめ確認したうえで大阪での取材スケジュールを決めるせいかもしれない。それとは別に、夏の高校野球のシーズンには必ず一度、甲子園球場に行くことがここ数年の習慣のようになっている。

 夏は、当然のことながら、炎天下での試合になる。それでなくとも暑いのによく出かけていくね、という人もいる。しかし、真夏のデイゲームは、ここでしか見られないのだ。ぼくは、野球はナイターより…

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