それなのに、なぜ逃げるのか
近年相次ぐ、保釈中や拘留中の逃走、そして刑務所からの脱走。罪を犯した者や、その嫌疑がかかる者が逃げれば、その都度ニュースとなり、世の中を大きく騒がせる。彼らはなぜ逃げたのか。そして、なぜ逃げることができたのか。公判記録や逃亡犯との交流、現場の足取りから、その謎に迫りたい。日本においては、犯罪を犯しても、また、何か疑いをかけられても、〝逃げるが勝ち〟であり、それが許されているのではないか……。

〈準備は整っていた。心臓は、バクバクと緊張していた〉

 当時、交際していた女性とはかねてより頻繁に面会や手紙でやりとりを重ねていた。その中で、催涙スプレーを持ってくるように頼んだのだという。

 事件の日、女性は守山署に行く前に市内のガンショップを訪れ、催涙スプレーを3本購入していた。

「小さ目のものを薦めたのですが、とにかく強力なやつをくれ、というのです。それで米国製の『ペッパースプレー』という製品を売りました。一度、掛けられたら二十分ぐらいは目が開かない代物です」(ガンショップの店主の発言。『週刊新潮』199825日号より)

 山田警部補は、女性から野口に手渡された催涙スプレーに、気づいていなか…

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