哲学者・鶴見俊輔は戦前のアメリカで何を見たのか――
一九三〇年代後半米国に留学し,三〇年後そのインドシナ介入に対し積極的な反戦活動を進めている著者は,北米の民主主義的伝統を再考しつつ,それを黒人や原住民の側からとらえ直すことを試みる.文芸批評家,詩人,SNCCの活動家,黒豹党の行動と思想を追求する中で著者の北米体験は深刻な反省を強いられ,新たな米国像が浮彫される.

こころとからだ

 クリーヴァーは、白人のマックス・シュメリングを黒人のジョー・ルイスがヘヴィウェイトのボクシング・マッチでやぶった時の米国白人の熱狂を分析して、これは、ナチズム(シュメリングはドイツ人)にたいするデモクラシーの勝利の象徴としてかんげいされたのではないという。米国の黒人が肉体の動きにおいて偉大な達成を示す時には、米国の白人は拍手をおしまない。拳闘選手ジョー・ルイスだけでなく、歌手ポール・ロブソンも、トラムペット吹きルイ・アームストロングも、熱狂の対象となった。しかしそれは、かれらの動きがからだの動きにとどまるかぎりにおいてだ。からだの恐怖を黒人にまかせきりにすることによって、肉の腐敗からまぬがれ…

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