哲学者・鶴見俊輔は戦前のアメリカで何を見たのか――
一九三〇年代後半米国に留学し,三〇年後そのインドシナ介入に対し積極的な反戦活動を進めている著者は,北米の民主主義的伝統を再考しつつ,それを黒人や原住民の側からとらえ直すことを試みる.文芸批評家,詩人,SNCCの活動家,黒豹党の行動と思想を追求する中で著者の北米体験は深刻な反省を強いられ,新たな米国像が浮彫される.

あ と が き

 日本人の書いた北米紀行には、中浜万次郎、浜田彦蔵のような漂流者、新島襄のような脱藩浪士によるものなど、多くの本がある。内村鑑三の『余は如何にして基督信徒となりし乎』、片山潜の『自伝』、永井荷風の『西遊日誌抄』、清沢冽の『暗黒日記』、石垣綾子の『回想のスメドレー』は、自分の生活に影をおとしたものをとおしてえがいたすぐれた北米紀行である。一九三〇年代の北米の留学生活をえがいたものに都留重人の『アメリカ留学記』がある。

 そういう先人の仕事におよびもつかないが、私が書こうと思ったのは、おなじように、自分にのこるものとしての北米の姿である。とくに自分の体験の意味を修正する過程を書きたいと思った。

 米国…

この作品では本文テキストのコピー機能を制限しています

01