哲学者・鶴見俊輔は戦前のアメリカで何を見たのか――
一九三〇年代後半米国に留学し,三〇年後そのインドシナ介入に対し積極的な反戦活動を進めている著者は,北米の民主主義的伝統を再考しつつ,それを黒人や原住民の側からとらえ直すことを試みる.文芸批評家,詩人,SNCCの活動家,黒豹党の行動と思想を追求する中で著者の北米体験は深刻な反省を強いられ,新たな米国像が浮彫される.

象徴としての『白鯨』

 もう一度、マシースンの『アメリカの文芸復興』にもどって、この大きな本の要約を試みよう。

 エマソンの『代表的人間』はカーライルの『英雄と英雄崇拝』(一八四〇年)の影響の下にうまれた。エマソンがカーライルを訪ね、その人がらから好い印象をうけてかえってきたことは、日記の示すとおりである。だが、すでにそこには、好意とともに、ある種のちがいが自覚されている。そのちがいは、日記よりおくれて書かれたエマソンの本の題名が、カーライルの本といくらかちがうことにも、あらわれている。エマソンによれば、偉人などという言葉は、有害である。それは、偉人という特別の集団を、人間一般に対して別にもうけるからで、エマソンにと…

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