哲学者・鶴見俊輔は戦前のアメリカで何を見たのか――
一九三〇年代後半米国に留学し,三〇年後そのインドシナ介入に対し積極的な反戦活動を進めている著者は,北米の民主主義的伝統を再考しつつ,それを黒人や原住民の側からとらえ直すことを試みる.文芸批評家,詩人,SNCCの活動家,黒豹党の行動と思想を追求する中で著者の北米体験は深刻な反省を強いられ,新たな米国像が浮彫される.

ビート世代の登場

 このように自然と安らかに結びつけられた世界を北米の白人が求めるようになったのは、第二次世界大戦以後のことである。ナチスのユダヤ人虐殺、ソヴィエト・ロシアの大量粛清、米国自身の原爆投下、これらの事実は、西欧文明の道をさらに進むことへのうたがいをもたらした。やがてヴェトナム戦争がおこり、この長い戦争の中で、自分たちの国の自然科学と社会科学が、アジアの小国の侵略のために使いこなされるのを見て、科学技術にもとづく文明にたいするつよい反感がうまれた。シオドー・ロスザックの『反文化の形成』(一九七〇年)によると、権力批判の運動の中で宗教が求められたことは、植民時代は別としてこの時までにたえてなかったこと…

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