哲学者・鶴見俊輔は戦前のアメリカで何を見たのか――
一九三〇年代後半米国に留学し,三〇年後そのインドシナ介入に対し積極的な反戦活動を進めている著者は,北米の民主主義的伝統を再考しつつ,それを黒人や原住民の側からとらえ直すことを試みる.文芸批評家,詩人,SNCCの活動家,黒豹党の行動と思想を追求する中で著者の北米体験は深刻な反省を強いられ,新たな米国像が浮彫される.

ハイアワサとデガナウィダ

 一九六八年現在、アメリカ・インディアンの人口は、六六万二千人で、米国の人口の〇・三パーセントである。コロンブスが北米に来る前には、百万人いたと推定されている。それでも大きな人口と感じられないかも知れない。量として人間を見ることになれた米国人の眼には、長い間かれらの文化のもつ意味はとらえられることがなかった。これまでの研究の結果を岡田宏明が「アメリカ・インディアン」(大橋健三郎編『フロンティアの意味──現実と神話』、一九六九年)に要約しているところによると、ニュー・メキシコ州のクローヴィス遺跡は、今から一万一千年以上前のものだということで、インディアンの祖先は、それよりも前から北米に来ていたと…

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