哲学者・鶴見俊輔は戦前のアメリカで何を見たのか――
一九三〇年代後半米国に留学し,三〇年後そのインドシナ介入に対し積極的な反戦活動を進めている著者は,北米の民主主義的伝統を再考しつつ,それを黒人や原住民の側からとらえ直すことを試みる.文芸批評家,詩人,SNCCの活動家,黒豹党の行動と思想を追求する中で著者の北米体験は深刻な反省を強いられ,新たな米国像が浮彫される.

終 章 岩  国

 一九七一年の五月五日、こどもの日に、ベ平連の仲間と一緒に山口県の岩国で凧あげをした。

 その二日前からデモで前ぶれをして、

 「岩国基地から米軍の飛行機をとばせないぞ、凧と風船で。」

と叫んでまわったその前ぶれほどに一機もとびたたせないという効果があったわけではない。しかし、手ごたえがあったことはたしかで、デモをおさえにかかった警察をとおして、風船と凧がじゃまになるから、すぐにやめろという要求が、一日の中に四度つたえられた。警察は、百人あまりで、山口県全体からあつめられたものだそうで、朝鮮に近いむか半島から来たひとりの警官によると、朝の四時におこされて岩国まで来いというので来たが、何のことか、よ…

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