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地震の予知ではありません!「南海トラフ地震臨時情報」の正しい意味が伝わっていない

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

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「丁寧に説明しないと地震予知と聞こえる」 存在や意味が伝わっていない「南海トラフ地震臨時情報」

8月8日、宮崎県で最大震度6弱の強い揺れを観測したことをうけて、気象庁は南海トラフ地震の「巨大地震注意」情報を発表しました。

この「南海トラフ地震臨時情報」の運用が始まったのは2019年で、臨時情報の発表は運用開始以来初めてです。

南海トラフ地震がおきれば、その被害は甚大なだけに、心配です。臨時情報もメディアで広くとりあげられ、関心を呼んでいます。

ただ、気になるのはこの「南海トラフ地震臨時情報」がどういう意味のものか、正しく伝わっている報道が少ないことです。

重要なことは、この臨時情報は「地震予知ではない」ということです。実は今年4月に、南海トラフ地震でもっとも大きな被害が心配される地域のひとつである静岡県の静岡放送が、この問題をシリーズ「わたしの防災」の中で丁寧に解説しています。

この中でも、臨時情報が予知と誤解される懸念を強く指摘しています。

関西大学社会安全学部 林能成教授も、

巨大地震が1週間以内に発生する頻度は「巨大地震注意」で数百回に1回、「巨大地震警戒」で十数回に1回とされます。統計的に地震の発生する可能性が普段より高まっていることが言えたとしても、確率としては低いことを併せて伝える必要がある

と、指摘したうえで、「地震はいつ起きるかわからないが、普段よりは少し起きやすくなっている情報だと、相当丁寧に説明しないと、どう聞いても地震予知と聞こえてしまう」と懸念します。

実際、今回の報道でも、「普段より高まっているが、確率として低い」ということを丁寧に説明し、伝えていた報道はあまり目につきませんでした。

もちろん、だからといって南海トラフ地震が起きないと言っているのではありません。地震はいつ起きるかわかりません。常にその備えをしておくことが重要です。

だからこそ、正しく情報を理解し、地震は予知できるものではないということを認識し、普段からその準備をしておくことが重要です。

報道もまた、その丁寧さが必要です(瀬)