新疆ウイグル自治区の強制不妊疑惑をスクープした調査報道記者が中国「三国志の聖地」を徹底的に取材した
『三国志を歩く 中国を知る』という旅行ガイドのようなタイトルを見て旅行モノを思って気楽に読み始めたら、圧倒的な知識と取材をもとに現代中国の実情を描き切るルポルタージュでした。
執筆者は西日本新聞の前中国総局長、坂本信博さん。
外国人労働者との共生を考えるキャンペーン報道「新 移民時代」をリードし、出入国管理及び難民認定法の改正につなげたり、読者とのやりとりを起点する調査報道「あなたの特命取材班」を展開しジャーナリズム・オン・デマンドを提唱したりするなど、調査報道の第一人者である坂本さんが、中国勤務中に、各地を取材し歩いたその総仕上げともいう本です。
中国新疆ウイグル自治区の強制不妊疑惑という大スクープの裏側も興味深いですが、中国の宗教の実情や取材妨害の手法など、彼の国の知られざる実態が描かれています。
もちろん三国志の「聖地」がどうなっているかという旅行ガイドとしても、土地の歴史だけでなく、それが現代にまでつながる背景をさまざまな資料を読み込み、街を歩いてとりあげているので、読んでいるうちに行きたくなります。
一方で、中国については先入観やイデオロギーではなく冷静な視点で評価をしている点も、凡百の中国本とは異なります。
日本を代表する調査報道記者が取材の制約が厳しい国で徹底的に取材して回った力作は、三国志好きはもちろんですが、現在の中国を知りたい人は必読です(瀬)